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クロカジキから軍事まで - 書評 - 進化する魚型ロボットが僕らに教えてくれること

日曜日, 1月 12, 2014

進化する魚型ロボットが僕らに教えてくれること
  • 作者:ジョン・H・ロング
  • 出版社:青土社
  • 発売日: 2013-08-22

本書は、魚好き(クロカジキ)の生物学者が、脊椎動物の進化の過程を研究する為に、魚型のロボットを開発することになりその研究成果をまとめた本である。この本を読む人で自然淘汰を間違って理解している人は少ないと思うけど、まず進化には淘汰や、近親交配、突然変異など様々な理由があり、淘汰とは優れているものだけが生き残るわけではなく、よりバラバラな子孫を多く残す為の過程であるという解説から始まる。
次に、餌を効率良くとる為に進化する魚型ロボット「タドロ3」の開発に取りかかる。これだけでも多くの事実が分かってくるが、捕食されるレイヤーを追加した「タドロ4」では更に様々なことが分かってくる。この二つを組み合わせることで実験を繰り返していくとその進化があたかも知性、知能のようなものに見えるようになるのだ。そこで筆者は「では脳とは何なのか。」という話題に逸れていくのだけど、それが面白い。実験の淘汰圧で進化したのは体であり脳ではない。
アラン・チューリングが「脳はコンピュータと全く同じように機能している」と論じたことを取り上げ、同じように見えることと同じことの違いを解説していく。これはまさに相関と因果にも関係することであるが、読んでいて様々なことを考えてしまい時間が経ってしまった。
結局、全てのことが不可分なことがおぼろげに分かってくるのだけど。
「進化する魚型ロボット面白そう!」というだけで本書を取ったぼくは、既にその辺を読んでいて、そんな理由なんかどうでも良くなってしまっていた。それだけ考えられることは実に多い。その後も章を追う毎に既に魚ですらない進化トレッカーの開発までどんどん進展していく。
最終章に筆者もまさか魚型ロボットを作ることが倫理や軍事のことまで考えるに至ったこと、または視野に入れないといけないことのジレンマを吐露しているが、そういう複雑性こそが面白くも数奇でもある。
テクノロジーは軍事と繋がっていることは既に意識していて、今年調べるテーマなのでいいとして、特に身体性の脳の話が出てくる所が印象に残った。
専門用語も結構な出てくる。
※例えば単純構造のモジュールで階層構造で構築する包摂(サブサンプション)など...
まあそれらは、その都度調べたりもしたけど、開発のところでは宇宙工学の先駆者ケリー・ジョンソンの「話は単純にしとくんだ、ばーか(Keep it Simple,Stupid )」。というKISS原理を持ち出したしたり、技術者の「理解できているなら作れる」という秘密の合言葉にいらだちを爆発させ、「ロボットを作ってからそいつに何が出来るかみようよ!仕様がわかるくらいなら、もう答えは分かっていることになるじゃないか。今やっているのは仮説をテストすることなんだよ!」― しーん。
という笑えるやりとりもある。

★★★☆☆
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