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これ読んどけ! -『世界を一周しながら、リアルな「お金の話」を聞いてみた。』- COURRiER Japon 2013年 12月号

日曜日, 11月 24, 2013
むむむ、面白い!
COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2013年 12月号 [雑誌]

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2013年 12月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社:講談社
  • 発売日: 2013-10-25

さて、クーリエ・ジャポン12月号の特集は、『世界を一周しながら、リアルな「お金の話」を聞いてみた。』である


参考になった内容を所感と共にまとめてみる。

アメリカ

アメリカの片田舎に繊維工場が戻ってきているという話。
なぜか?それは企業が収益性をいかに高めるかと単純に利益を追求しただけで、工場は戻っても雇用は戻ってこないという身も蓋もない話でもあるのだけど、変革をもたらしているのは確かである。
まず質はもちろん生産期間も2〜4ヶ月も改善できる点。それと先述した機械化で労働者が不要になりつつある点である。
サウスカロライナ州のガフニーにあるパークデール・ミルズの工場は現在140人の従業員で毎週約1130トンの糸を生産している。1980年だったら2000人以上必要だったとのこと。
グローバル化や機械化を嫌う人々が叫ぶアメリカがグローバル化の恩恵を受けているばかりという話が嘘っぱちかが分かる記事である。

カタール

天然資源から得た利益で膨大な投資を続けるカタール。
前首長が61歳で退位して創造的な考えをもった新しい世代が率いるべきと新首長になったのはなんと33歳。他のペルシャ湾岸諸国と比べて驚くほど若い。
一族経営の国の為、厳格なトップダウン方式で運営されているのが、今のところは吉と出ているようだ。そして、水の蓄えが67時間分しかなく食料の9割は輸入に頼るなどの将来への問題意識としてあるとのこと。
しかし、ホルムズ海峡を遮断されるというのは結構現実的なシナリオなのだろうか...。そうなると日本もエネルギー的には窮地に立たされるわけだけど。
余談だが昨年、村上隆の個展が開かれたことがぼくの記憶には新しい。しかし、それはほとんど国民にも知られていなかったりする。
クールジャパンを主張する日本政府が実は全然力を入れていないことがあの個展を取り上げないことからも分かる。


スペイン

失業率が26%にも昇るスペインだが、コメドールソリダーリオという食堂では一日500食もの食事が無料で配られていたり、ババリア保育園という保護者達で順番で面倒を見る保育園、空き地を駐車場に変えるのに反対した人達が作ったフォラト共同農園などの、コミュニティの新しい動きが面白い。

イタリア

非合法組織への100日間の潜入レポート。良くやるなぁ。
カモッラという非合法組織について。彼らはヴェーレ(帆)と呼ばれる大規模な団地に住んでいる。
ヴェーレには独特の戒律があり内容はどんな時も手ぶらでいること。帽子もヘルメットも禁止、携帯電話も取り出す時に銃と間違われるので注意すること、などである。
イタリアの犯罪組織はカモッラ、ンドランゲタ、コローナウニータ、マフィアの4大組織とされておりこの4大組織が稼ぎだす年間取引高はGDPの7%にも及ぶそう。
シチリアの犯罪組織だけをマフィアと呼ぶということは豆知識として覚えておくといつかクイズに答えられるかもしれない。

インド

商業都市ムンバイにある巨大スラム「ダラヴィ」。ダラヴィはインド社会の縮図である。
そこには約6万件の建物に100万人近い人間が暮らし、働いている。生産される製品の売上高は年に600〜1000億円にものぼる。
インドは年間経済成長の大部分、雇用の90%近くを裏の経済が支えているそうだ。
面白いことに、かつてダラヴィではギャングや暴力沙汰で有名だったが、今では犯罪率がムンバイの裕福な地域よりも低いということである。働くことがいかに犯罪率を減らすかという実験をインドのスラムでやってのけている。
ダラヴィだからこそ起業出来たという人達も多いという。こういった地下経済が国の成長を下支えするケースは発展途上国でも今後増えていくものと思われる。
さて、実験といえば、インド中部にあるインドールでは、無料の治療と題して悪質な治験がおこなわれているようだ。
治験コストが半額程度で済むことや小遣い稼ぎをいとわない医師達が60万人もいること、さまざまな少数民族がいて、異なる身体的特徴をもつ被験者が集められるという条件が揃っていることも大きいようだ。
被験者の死因を特定する倫理委員会も製薬会社からカネを受け取っていたりして、なかなか改善が難しい現実がそこにはある。
ファイザー、メルク、ノバルティス、バイエルなど世界の大手製薬会社20社の半分はインドールで治験を実施していることも忘れてはならないだろう。
我々が使用する薬だってそこで治験された後に承認されたのだろうから。

中国

中国当局は経済成長の為に農村人口を減らす政策に躍起になっている。どうやって行うかというと、天災が起きるとそれを当局は移住の推進の理由に利用するようである。
そして、農村も中規模の都市にする施策がどんどん進行している。
しかし、都市になっても職がないというアンマッチもあり最適化にはまだ遠いようだ。
記事にも登場する李氏のように役人の中には文化大革命で大学生だったのに閉鎖され農村で働かされたことがコンプレックスになっている人達も一定数いるのだろう。
記事は李氏の「中国の一般の人々に後進的な生き方に別れを告げることを教えたい」というコメントで締めくくられる。

韓国

不動産バブルが弾けて、住宅ローンによって家計が圧迫される人達「ハウスプア」の特集。
膨大な時間を不動産一つに奪われるのは心苦しい限りである。元々買うつもりもないけど、だまされて絶対買わないようにしないとな…

フランス

現行の法律ではシャンゼリゼなど観光地区を除き、21時〜朝6時までは店を開けることを禁じられているが、それら法律に反対する労働組合がおこなった改善の訴えが裁判所に認められたそう。仕事よりもプライヴェートが優先されるフランスの文化が経済危機により変わってきているというのが興味深い。


…以上が今号を読んだ所感だが、今号では他にもマンモス復活を夢見る日本の熱意という記事で、近畿大学の入谷明教授がクローンだらけの動物園ヤクーツクパークを作ることをサハ共和国に建設することに政府の同意を得ている話なども面白い。

世界の教育の現場についても良く取り上げられている。...特にフランス人学校の文化を大切にすることには得るものも多かった。

今号の内容は興味のあることばかりで充実した内容であった。

追伸、これ読んどけ!とは成毛眞さんのこれって暴論?からのインスパイアである。


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