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カルデア人からひも理論まで - 書評 - 宇宙はなぜこのような宇宙なのか

土曜日, 1月 18, 2014

本書の著者である青木薫氏はサイエンスノンフィクション(サイモンシン)の訳者としても有名で、自身も理論物理学の理学博士である。 そんな著者による初の書き下ろしのテーマは人間原理だ。 

人間原理というものは、「宇宙が人間に適しているのは、 そうでなければ人間は宇宙を観測し得ないから」 というもので、トートロジーのように聞こえる。
人間がいるから真理が存在しているかのように見えるということは、裏を返せば人間がやっている科学なんてものに絶対的真理はあり受け得ないと受け止めることもありそうな、宗教めいてる気もする大変危なっかしいなものでもある。 
しかし、著者はもちろん、人間原理の研究者もトンデモな人達ではない。あえて科学的に考えて「だからどうした?」という風に取れる人間原理も研究の上で重要だと位置づける。 
何故、重要なのか?そのためには、歴史を知らないといけない。ということで本書では人間の歴史が宇宙とどう関わって来たのかにかなりの部分を割り当てている。プトレマイオスやコペルニクスを通り、現代まで駆け足で進むが導円や周転円の概念、あとはいくつか出てくる惑星の動作の法則(モデル)もどんどんバーションアップしては、過去のモデルを見直したりと、様々なエピソードで天(宇宙)を理解しようとした人達の宗教観が研究内容と密接に絡んできたことが分かるのは示唆的である。 アリストテレスやモンテーニュ、ゲーテなどの考え方を宇宙について取り上げた本書で知ることになるとは思っていなかった。 中盤から後半にかけ、宇宙の果てから、無限宇宙、相対性理論でアインシュタインなどが出てきてこの当たりからは一般の宇宙書っぽくなってくる。 
しかし、なぜこのような宇宙なのかという答えは出ていない。重力が非常に弱い力で、分子や素粒子レベル同士でも引き合うのなども今現在進行形で研究してる最中であり確かなことは分かっていない。不確定性原理などの量子学の範疇が宇宙を理解することに重要なことだと分かってくる。

 ...と、この辺まででぼくの理解は止まっている。ひも理論も理解したとは言えないし、人間原理、ひいては宇宙の研究は著者も書いてあるように白でも黒でもない永遠に続くグレーの階調を突き進んでいる感があり、非常に哲学的なテーマでもある。読んでいて宇宙にとどまらず様々なことを考えることになった。量子学もそもそも皮膚感覚的に理解出来る人は少ないだろうから、この本を読んでから、とりあえず量子学の入門本をポチったのは言うまでもない。
しかし、宇宙は知的興奮を掻き立てられる楽しいテーマである。ハマると抜けられなくなりそうなので、しばらくしたらまた本書を読んで考えたいと思う。
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