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ブロマガへの動線 - 書評 -『まずいラーメン屋はどこへ消えた?「椅子取りゲーム社会」で生き残る方法』岩崎夏海

木曜日, 6月 27, 2013

まずいラーメン屋は、インターネットの口コミで駆逐されました。

という答えだけで、本エントリーを終えようか迷った。しかし、頭の切り替えが出来ない人には読んで体系的に理解して欲しい気もするので書く。

本書は、ハックルこと「もしドラ」の著者として有名な岩崎夏海による「新社会論」である。

この本の前半部分の要約は「古くから情報は共有されてきた。そして、インターネットの普及で情報共有のあらゆるコストが下がった。そして、情報は共有されればされる程に価値が下がり、相対的に体験の価値が重要視される時代になった。」ということで、これは特に議論の余地のない事実だと思う。

上記の内容が、何年も前に書かれた本だとしたら、著者が伝えたい想定読者(若者)にもちょうど良かったのかもしれないが、残念ながらその想定読者にとって本書の情報は古い。
寧ろ、若者にとって、そんなことは意識せずに、呼吸をするが如く生きている時代なのだ。
本書に書かれているような、インターネットの隆盛で、SNSや口コミの時代背景は、情報リテラシーがある人にとって常識的なことである。

競争の少ない、ブルーオーシャンを狙うことで必要なことは、イノベーションであり、それを生き方で例えると、20代の頃と30代の頃で、別々の仕事や経験を積んで、40代でそれらの違った知識を組み合わせる仕事をすることで、競争のない世界を生きていくことが出来ると著者はいう。
その一見関連がないことを学ぶという姿勢自体は賛成である。関連しているかどうかは後になって分かるものなのだから。

しかし、イノベーションのジレンマから始まり、AppleのiPhoneが成功した理由や、Amazon、Googleなどの企業の成功事例すら未だに知らない人は、「情報弱者過ぎないか。」と思ってしまう。知らない人にとっては、時代に追いつくことが出来る本だとも言えるが、それを知らないのは、大半が50代以降の人々なのではないだろうか。
著者は「新しいフィールドで生き抜いて欲しい為に本書を書いた」と、あとがきに書いてあるが、そこから想定される読者は40代以下になるはずなのに、実際に本書の内容が刺さるのは50代以降の人々という結論になってしまう。

この論考からは、著者が大事だと説く、今現在の時代の「現場感」が感じられないのだ。
現在成功している企業や、AKB48の成功事例、音楽業界がCDよりもLIVE、情報よりも体験を追求する時代に変わったことは、現場にいる若者は皆、わざわざ体系的に言葉にしないだけで、分かっていると思うのだけど、これはぼくの方に逆に認識が足りないのかなと思ってしまった程。

少々、批判的に書いてしまったが、著者の代表作で200万部以上売れた『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 』が、ドラッガー自身の『マネジメント』を売るための広告の役割として書かれたことや、本の顧客を誰か考え、読む人よりもプレゼントする人に着目した点は発想の転換が面白いし、AKB48は秋元康が顧客と触れ合う為に作った集団で、その着想自体はショーパブだった。など、著者自身の経験として「現場感」が感じられる箇所が、良かったのは事実である。

となると、著者自身のことの方が、著者が語っている新社会論よりも面白く、この薄い新書の本質は更に薄くなり、著者のブロマガを購読した方が効率的なのかもしれない。
「そうか、本書もブロマガの広告であり、動線だったのか。」と書きながら腑に落ちた。

★★★☆☆

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