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何が書かれていないのか - 書評 - 『知らないと恥をかく世界の大問題』池上彰

日曜日, 3月 03, 2013
日々過ごしていると、毎日は当たり前のように繰り返されるし、時代は大きく変わっていると感じることも少ないが、この本を読んで「時は止まっていない」という当たり前のことを再認識させられる。

知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)[Kindle版]
  • 作者:池上 彰
  • 出版社:角川マガジンズ
  • 発売日: 2012-09-01

内容紹介(Amazonより)
リーマン・ブラザーズの破綻で始まった世界金融危機。その後、日米ともに政権交代が実現し、金融危機後の新しい世界の在り方が模索されている。そこで、日本はもちろん、世界におけるさまざまな問題点をとりあげ、その中身を理解し、来るべき新しい時代の世界の潮流を読み解く。わかりやすいニュース解説で定評のある、頼れる“お父さん”池上彰さんがズバリ答える。知らないと恥をかく世界のニュースが2時間でわかるおトクな一冊。
この本が発売されてから既に3年3ヶ月。FacebookもTwitterもLINEも本著には登場しない。

その間に、民主党政権で3回もリーダーを変え、昨年の衆議院議員総選挙で自民党が大勝し、安倍晋三が2回目の総理大臣の座について、オバマも再選し、北朝鮮は金正日から金正恩にリーダーを交代し、そんな世界のリーダーの交代劇があった2012年

そして、3月11日、2万人以上の人的被害、津波による被害、原発事故で日本を分断した東日本大震災があった2011年

中東で起こったジャスミン革命からアラブの春となり、世界各地でデモが起きた2010年

当然ながらこの本には、これだけの事が起きたこの濃い3年間が書かれていない。
むしろ、当時の池上さんは民主党政権にかなりの期待を寄せている(いた)ことも読み取れる。
だからと言ってこの本の有用性が落ちる訳ではないのが凄いといった所。
世界で今起きている問題も火種は既にあったのだと振り返ったり出来る。
それぞれ一定の問題を抱えている。だから、日本はこの国だけを見習えば良いという例も答えもない。
ただ唯一言えることは教育の重要性である。その意味では第6章で紹介されているフィンランドの教育政策は見習う所も多いだろうし、その実現が容易ではないなら日本全体という規模では大き過ぎるので、地方分権のすすめの項で書いてある独自色を持った政策が実現されるというのも良い方向性だと思う。
だから、この本と今の日本を比較すると、進んでいる方向性は間違ってはいない。ただやはり年金の解決など長期的な問題は未だに取り組めていないし解決の目処も立っていないのだなと思った。
知らない所だけを読んでいくと僅か1時間も掛からない本だけど、池上さんならではの意見「発展する国かどうかは、書店をみれば分かる」とかなるほどと思ったし、サブプライムローンを闇鍋に例えている挿絵なんかも非常に分かりやすく伝える重要性を考えさせられた。
だから、これは希望だけど、池上さんには自分が居たメディアのイノベーションを進めて欲しいと思う。分かる人だけが分かっていれば良い問題では既にないのだから。
そして、間口が広いこの本を入り口にしてさらに色々なことを調べる気にもなる。という循環が必要だと思うのだ。

最終的に、この本には何が書かれていないのかを知るという批評性を持って読むことが身に付くかもしれないということまで池上さんが計算してるなら脱帽である。

★★★☆☆

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